アルツハイマー型認知症と記憶障害について
アルツハイマー型認知症と言えば物忘れ、つまり「記憶障害」が真っ先に頭に浮かびますよね。
しかし、だからと言って何もかも忘れてしまうというワケではありません。
実は、アルツハイマー型認知症の記憶障害には、段階があるのです。
今回は、アルツハイマー型認知症の記憶障害についてお伝えします。
アルツハイマー型認知症の記憶障害の原因
アルツハイマー型認知症の「記憶障害」の原因は何でしょうか?
たとえば、見たり聞いたり体験した情報は、脳の海馬という部位に送られます。
海馬に情報がとどまり「記憶」されるのは、短期間(一説では数十秒)とされます。
海馬で記憶された情報(短期記憶)は、大脳皮質に送られて長期記憶となります。
アルツハイマー型認知症では、脳の海馬という部位に障害が起こるため記憶障害が起きます。
これは、情報が集められ「記憶」処理を施す最初の工程が、出来にくくなると考えられるでしょう。
アルツハイマー型認知症の記憶障害では、エピソード(体験)記憶が障害されることも特徴的です。
健常者の場合でも、昨日の食事のメニューを全て思い出せないことはあるかもしれません。
しかし、「食事をした事」を忘れてしまうことはありませんよね。
アルツハイマー型認知症の記憶障害では、「食事をした」というエピソード(体験)そのものを忘れてしまいます。
アルツハイマー型認知症が進行するにつれ、結婚したことや子供がいることなども忘れていきます。
アルツハイマー型認知症では、記憶障害によって料理が出来なくなる場合もあります。
記憶力や注意力が低下して調味料の量や種類が不適切だったり、煮炊きする時間が不適切だったりして美味しくない(あるいは食べられない)ためです。
しかし、包丁で肉や野菜を切る、フライパンで炒めるなどの作業は出来ます。
切る、炒めるなどの作業を覚えていることを「手続き記憶」といいます。
自転車に乗る、楽器を演奏するなども「手続き記憶」です。
アルツハイマー型認知症で記憶障害になっても、手続き記憶は比較的長く保たれます。
アルツハイマー型認知症の記憶障害の対応と注意点
アルツハイマー型認知症の記憶障害が現れた場合、対処法はどのようにすれば良いのでしょうか?
まず、知っておかなければならないのは、アルツハイマー型認知症の記憶障害では「忘れたこと」を理解できません。
アルツハイマー型認知症の人は、財布が無ければ誰かが盗ったと思います。
空腹を訴えて「もう食べた」と言われると、「食べさせてもらえない」と感じます。
これらにより、介護する人や周囲の人とトラブルになる場合があります。
アルツハイマー型認知症の記憶障害の対応では、「安心できるように」対応するとよいでしょう。
財布が無いと言われたら、「一緒に探しましょう」と、本人が見つけられるように演出します。
食べてないと言われたら、「今、作っていますよ」「先にこちらを食べていてください」などと対応しましょう。
アルツハイマー型認知症でも「手続き記憶」が保たれている場合があります。
出来ることをしてもらい、アルツハイマー型認知症の人の自尊心を認めることも大切です。
アルツハイマー型認知症の記憶障害では、短期記憶、長期記憶、エピソード(体験)記憶、手続き記憶が障害されます。
アルツハイマー型認知症の人は、「忘れたこと」を指摘すると「否定された」と感じます。
関係を悪化させないためにも、アルツハイマー型認知症の人が安心する対応を心掛けましょう。