アルツハイマー型認知症の症状「失語」について
アルツハイマー型認知症の症状の一つに「失語」があります。
失語症と聞くと、あなたはどんなイメージを持ちますか?
「話せないなら書けばいい」「書けないなら文字を指させばいい」
こんなイメージでしょうか?
しかし、失語症はもう少し複雑です。
失語症は、アルツハイマー型認知症の「中核症状」の1つなのです。
アルツハイマー型認知症だけでなく、「脳出血」や「脳梗塞」でも起きる症状が「失語」です。
今回は、アルツハイマー型認知症の中核症状の1つでもある「失語」についてお伝えします。
アルツハイマー型認知症の症状としても起こる失語とは?
アルツハイマー型認知症の症状による「失語」の前に、会話について少しご説明します。
会話が成立するためには、いくつかのステップが正しく行える必要があります。
- 音が聞こえる
- 言葉として理解できる
- 意味が理解できる
- 自分が話したいことを考える
- 口、のど、呼吸などを思うように動かせる
- 相手に伝わるように話せる
- 単語の知識がある
- 文章として構成できる知識がある
このうちの⑤の「口、のど、呼吸などを思うように動かせる」が障害された場合は、「構音障害」となります。
失語症の特徴的なものには、「運動性失語」と「感覚性失語」があります。
「運動性失語」とは、言いたい言葉がなかなか出てこない、たどたどしい話し方になります。
「感覚性失語」とは、「それだから、てがいうてもらうとしますか」のように、話し方は流暢ですが意味が通じない、おかしな言葉という状態になります。
これは、脳の言語をつかさどる部分のどこが障害されたかにより、分かれます。
脳出血や脳梗塞では障害が限局的なので、運動性失語か感覚性失語のどちらかが起こるというケースがあります。
ところが、アルツハイマー型認知症による失語の症状では、広い分野が全体的に障害されます。
そのため、この両方の症状が合わさって見られます。
アルツハイマー型認知症の症状である「失語」を詳しく
アルツハイマー型認知症によって失語の症状が現れる場合、初期では「名詞」が出にくくなります。
これは、「記憶の障害」とされます。
しかし、適切な単語が出てこないという点では、「運動性失語」ともいえる症状でしょう。
アルツハイマー型認知症が進むと、会話の中で「あれ」「これ」という代名詞が増えます。
「若い時にはね、あれでこうしたでしょ。一生懸命ね、こうしてこうしたのよ。」
私の経験した、アルツハイマー型認知症の方の話です。
笑顔で手ぶりも交えて、一生懸命お話ししてくれます。
でも、意味は全くわかりません。
アルツハイマー型認知症がもっと進行すると、脳の障害は言語をつかさどる分野だけでなく、脳全体の障害となります。
考えることや、話をしようという意欲も少なくなります。
そうなると、言葉だけでなく「顔の表情」も乏しくなります。
この頃では、言葉や単語の意味が、理解できなくなっているのかもしれません。
言葉は、他人とコミュニケーションをとる上で、必要不可欠のものです。
失語という症状は、伝えたいことが伝わらないので、本人と周囲の人の双方のストレスになります。
認知症の人が何かを訴えている時には、ゆっくりと接することを心掛けたいものです。