認知症の園芸療法について
昨今、認知症の治療の一環として「園芸療法」と呼ばれるものが取り入れられています。
ガーデニングが趣味の方は、たくさんいらっしゃいますから、園芸療法はその名前だけでも認知症の人が取り組みやすそうです。
小さな種や苗が育って行き、やがて花が咲き実を結ぶ、そんな姿は見ているだけでも癒されます。
また、植物が根を張る様子は「根ざす」という言葉にもなり、定着する・しっくりくる・溶け込むなどの安定を感じさせる意味に使われます。
土をいじり、土と暮らすことで、心身の安定が得られることは、この言葉からもうかがえます。
今回は、認知症の人の治療にも有効な「園芸療法」について説明します。
認知症の園芸療法の流れ(1)~(3)
園芸療法は、認知症の人とスタッフが「園芸作業」をしながら、認知機能訓練と体力作りなどを行うものです。
ある病院のおける、認知症への園芸療法の流れと効果をご紹介しましょう。
(1)リアリティーオリエンテーション
リアリティーオリエンテーションは、氏名・曜日・時間・場所・季節・天候などの情報を、園芸活動中の認知症の方に繰り返し提供します。
(2)回想法
回想法では、野菜や草花を題材にして、認知症の方が想い出や昔の体験などを話します。
園芸作業中にたまたま出てくるカエルやカマキリなども話題になります。
(3)力の維持・向上
園芸療法の作業では、水をあげたり草むしりをしたりと身体を使うことになりますので、体力の維持・向上に役立ちます。
さらに、立つ・しゃがむという動作を繰り返すことで、ストレッチにもなります。
認知症の園芸療法の流れ(4)~(7)
(4)リクラゼーション
天気のよい日に戸外で行うので気持ちよく、リラクゼーション効果が期待できます。
認知症の方は、園芸作業を見ているだけでも癒しになります。
(5)コミュニケーション
共同作業をしながらなので、認知症の人もスタッフも会話が増えて、コミュニケーションが円滑になるというメリットがあります。。
(6)食欲増進
認知症の方も自分で収穫した作物はうれしいものです。それが食事として提供されます。
(7)意欲増進
園芸作業後は、認知症の方の中に大きな声や笑顔で話す人が増えます。意欲が湧くのですね。
また、園芸療法の作業によって植物が育っていく姿は、複雑な人間の社会に対応しきれない認知症の人にも、訴えるものがあるのでしょう。
植物は、個性があっても病気があってもそれなりに育ち、それなりに花を咲かせ実を付けます。
認知症の園芸療法を通して、私たちは植物に学ばなければいけないのかもしれませんね。