認知症を回想法で予防するとは?
認知症の予防になる回想法とは、一体どんな方法なのでしょうか?
回想法というくらいですから、認知症の方が昔を回想するというのは、なんとなくイメージできますよね。
高齢者に若かりし頃の話を聞くと、延々と止まらないという経験した方はいらっしゃるでしょう。
実は、そんな昔をしみじみ思い出すことが認知症予防になる場合があるのですが、そこに回想法のポイントがあります。
では、認知症の予防と進行をおさえる効果がある「回想法」についてご説明します。
認知症の予防になる回想法とその方法
認知症の予防になる回想法とは、1963年米国の精神科医が提唱した心理療法で、日本では1980年頃から研究されています。
以前は、認知症の人のADL(日常生活動作)低下の原因は、筋力低下や、円背など身体の老化による変化のためと考えられていました。
ところが、近年になり「記憶障害」もADL低下の原因になることが分かってきたのです。
回想法は、「ただ思い出を話してもらえばよい」というものではありません。
認知症に効果的と言われる回想法には、守るべき倫理もあるので、専門的な勉強をしてから行うほうが良いとされています。
具体的な回想法のやり方としては、幼少の頃の生活用品の写真を見たり、出来事を題材にしたりして、当時の思い出を話してもらいます。
終了後は、個人記録をつけたりアセスメントしたりすると、その後の認知症ケアの助けや、家族間の理解の助けとなります。
回想法による認知症への効果
回想法による認知症への効果について、私の実体験をお話します。
私がお世話した認知症のある男性は、介護に拒否や抵抗があり、時には職員に暴力をふるってしまう方で、二人の娘さんにたびたび施設に来てもらっていました。
長女は、何とか父親を施設に慣れさせようと、声をかけたり誘導したりしていましたが、次女は暴力をふるうようになった父親を怖がり、あまり接しようとしませんでした。
そんな認知症の父親に、臨床心理士による「個人回想法」を行ってもらいました。
回想法を通して、その男性の生い立ちや、男性の父親から貰った時計(すでに動かない)へのこだわりが家族・介護者に分かってくると、次第に認知症の男性の行動も落ち着いてきたのです。
このように、回想法には、抑うつ感の改善・不安の軽減・人生の満足度の向上・対人交流の促進という効果があります。
認知症の方に限らず、人生の思い出にはプラスとマイナスのものがありますが、全てがその人のカタチをつくっています。
回想法は、それを整理するためにも、とても役立つのです。