認知症の非薬物療法との関係性について
認知症の非薬物療法という言葉をご存知でしょうか?
病気やケガの時には、内科的治療、外科的治療、放射線療法、理学療法などが行われます。
骨折や脳卒中の治療として行われる「理学療法(リハビリテーション)」は、非薬物療法の1つです。
うつ病などの精神疾患で行われる心理療法も、非薬物療法です。
認知症でも、非薬物療法が有効です。
では、認知症に行われる非薬物療法とは、どのようなものでしょう。
今回は、認知症の非薬物療法についてお伝えします。
認知症の非薬物療法とは?
認知症で非薬物療法を行う目的は、認知症によって起こりやすくなる不穏や問題行動を予防・軽減するためです。
認知症では、うつ状態や気力の低下により、引きこもりがちになることがあります。
活動と睡眠のバランスが崩れて、夜になると落ち着かない、不穏になるなど場合もあります。
他人との交流を避けたり、些細なことでイライラしたり、暴力的になったりすることもあります。
認知症の非薬物療法では、日中に少人数で活動・交流することで、生活リズムを整えることができます。
他人から褒められたり、一緒に笑ったりすることで、自信がついたり肯定感を得られます。
これらの作用が良いサイクルとなり、認知症の不穏や問題行動の予防・軽減につながります。
実践されている認知症の非薬物療法
では、実践されている認知症の非薬物療法をご紹介しましょう。
回想法
方法:セラピスト1人に対し、認知症の人1人または5~6人
セラピストが用意した昔の物・写真などを見ながら、子供や学生の時、結婚や子育ての頃を思い出し、話す
セラピスト役は認知症の人の家族や介護スタッフでもよい
効果:他人の話を聞く、自分の話をすることで、記憶力や集中力をつける
自分の人生を振り返り、自信を取り戻す
リアリティオリエンテーション(現実見当識訓練)
方法:初期の認知症に有効
*24時間リアリティオリエンテーション
介護者などが日常生活の介助をしながら行う
例)着替えなどを手伝いながら、「今日は5月5日で、こどもの日ですね」などと情報提供する
*クラスルームリアリティオリエンテーション
数人のグループでセラピストが進行役をする
メンバーの名前や現在の場所などについて、情報提供する
効果:記憶中枢に繰り返し働きかけることで、認知機能の改善を図る
見当識障害による不安を解消できる
グループで行う場合は、他人とのコミュニケーションを通じて認知症の進行を遅らせる
バリデーション
方法:認知症の問題行動には、「意味がある」と考え「共感して接する」治療法
共感する手段として、認知症の人の人生を見つめなおしたり、一緒に行動してみる
効果:徘徊、帰宅願望、暴力的などの問題行動が緩和・軽減する
音楽療法
方法:懐かしい音楽を聞いたり、音楽に合わせて歌ったり演奏したりする
効果:認知症の人が音楽を聴くことで、リラックスして介護への抵抗が減少する
音楽に合わせて歌ったり体を動かすことで、記憶力や集中力を改善させる
その他の認知症の非薬物療法
- アロマテラピー
- ペットセラピー
- レクリエーション療法 など
認知症の非薬物療法は、認知症の不穏や問題行動を軽減することを目的とします。
認知症の非薬物療法の中には、訓練を受けたセラピストでなくても出来ることがたくさんあります。
認知症の人の家族や友人、介護スタッフなど、多くの人が認知症の非薬物療法を知って、実践して頂けることを祈ります。