前頭側頭型認知症と歩行障害について
前頭側頭型認知症には、歩行障害や転びやすいという症状が出るタイプがあります。
これは、前頭側頭型認知症には、パーキンソン症候群に似た病態を示すタイプがあるためです。
では、具体的にはナゼそのような症状があらわれてくるのでしょうか?
今回は、前頭側頭型認知症の歩行障害についてお伝えします。
前頭側頭型認知症の歩行障害の原因
前頭側頭型認知症には、脳の神経細胞の中に「ピック球」が見られるもの(ピック病)と見られないものがあります。
どちらの場合も脳の中のタウ蛋白が変性し、「異常タウ蛋白」の塊が出来て脳が萎縮します。
同じく「異常タウ蛋白」の塊が出来る病気に、大脳皮質基底核変性症(CBD)と進行性核上性麻痺(PSP)があります。
CBDとPSPは、歩行・運動障害を起こす神経難病ですが、進行してくると認知症の症状が現れることもあります。
近年の病理学上の分類では、前頭側頭葉変性症の中に前頭側頭型認知症・ピック病・大脳皮質基底核変性症・進行性核上性麻痺が含まれるとされます。
前頭側頭型認知症の歩行障害の対策
前頭側頭型認知症は人格の変化などの精神症状から出現しますが、進行してくると大脳皮質基底核変性症や進行性核上性麻痺のように歩行・運動障害が出現する場合があります。
前頭側頭型認知症でも起こる歩行・運動障害
姿勢反射障害とは、体のバランスがとりにくくなる症状です。
足腰の筋肉ではなく、体幹の筋肉が動きにくくなるために、方向転換の時にバランスを崩しやすくなります。
立位や歩行時に後ろから声をかけられて、振り向こうとして転ぶ場合もあります。
また、バランスを崩したときにとっさに手や腕を出すという「反射」も障害されるので、丸太が倒れるように転びます。
前頭側頭型認知症では眼球を動かす筋肉が障害され、特に下の方向を見ることが困難になります。
歩行する時に足元が見えにくいため、転びやすくなります。
前頭側頭型認知症の歩行・運動障害の対策
前頭側頭型認知症は、「自分は歩行障害があり転びやすいので気をつけよう」という判断が出来ません。
前頭側頭型認知症の歩行・運動障害の対策は、環境を整えることが大切です。
- 床に物を置かない
- 廊下やトイレに手すりをつける
- 病院や施設などでリハビリを受ける
- 後ろから声をかけない(ゆっくり前に回り込んで声をかける)
前頭側頭型認知症は、歩行・運動障害が出現する神経難病の仲間でもあります。
歩けないことよりも、とても転びやすいということが特徴です。
前頭側頭型認知症の歩行・運動障害の対策は、環境整備することや家族・介護者の声掛けの工夫です。