前頭側頭型認知症の遺伝について
前頭側頭型認知症の原因として遺伝があると言う話がありますが、本当でしょうか?
前頭側頭型認知症は、日本でも世界でもそれほど多くの症例があるわけではありません。
しかし、自分の親がどちらかが、この前頭側頭型認知症になっていたら遺伝は心配ですよね?
もしかすると、自分も親の年齢ぐらいになったら発症しないかと不安になってしまいます。
なぜなら、前頭側頭型認知症の症状の中に、周りの迷惑を考えず行なう自由奔放な行動や、反社会的な行動をとってしまうことがあるからです。
ここでは、そんな前頭側頭型認知症の遺伝について見ていきましょう。
前頭側頭型認知症に遺伝的要素はあるか?
では、前頭側頭型認知症の原因の中に遺伝的な要素はあるのでしょうか?
この原因に関して「発症原因は解明されてないが、ストレスホルモンが脳神経細胞を破壊する」と言う考え方もあるようです。
また、受け入れられている前頭側頭型認知症の原因の一つに「ピック球」と言われる物質があります。
この物質が脳神経細胞内に現れて細胞に影響を与える。
そして、脳の前頭葉と側頭葉を萎縮させ、前頭側頭型認知症を発症させると推測されています。
ただ「ピック球」が現れるメカニズムや、脳の萎縮にどのように関わっているかは解明できていないのが現状です。
この解明できていないところに、遺伝が関係しているのかもしれません。
なぜなら、前頭側頭型認知症は遺伝が関係する病気であるとか、患者さんのごく一部に遺伝子異常が分かっており遺伝するタイプもあるなどと言われているからです。
さらに、患者の家族のだいたい半数くらいは遺伝するなどの情報があります。
ですので、前頭側頭型認知症の原因として遺伝があると言う話は本当だと思われます。
前頭側頭型認知症の原因として遺伝がある理由は?
では、さらに前頭側頭型認知症の原因として遺伝があると考えられる理由には、どんなことがあるでしょうか?
日本では、家族歴のある患者さんはほとんどいませんが、海外では家族歴のある患者さんは30~50%認められているようです。
また、こんな報告もあります。
前頭側頭型認知症の患者の約40%は家族が若いうちから神経認知障害を持っている。
また、患者の10%は特定の遺伝子が変異しており遺伝の原因と考えられているというものです。
別の報告では、発症者は弧発性、遺伝性の両者の場合があるとも述べています。
これらの報告は、前頭側頭型認知症の原因として遺伝があると言う考えを裏付けていると言えるかも知れません。
ただし、このことはそれほど心配することではないと思われます。
なぜなら、一個人が前頭側頭型認知症になり、それが遺伝によるものである確率はかなり低いからです。
まず、有病率は10万人当たり2~10人です。
45~64歳の年齢の有病率でも10万人当たり10人、つまり、0.015%です。
そして、この患者の10%、つまり10万人の内の1人か2人が遺伝するという確率になります。
このことから、遺伝によって前頭側頭型認知症にかかりやすくなると呼べるほどのものではないと言えるでしょう。