前頭側頭型認知症の特徴について
前頭側頭型(ぜんとうそくとうがた)認知症の特徴には、どのようなことがあるのでしょうか?
社会のシステムや人間関係が複雑になっているためか、「引きこもり」の人が増えているようです。
これが前頭側頭型認知症の特徴に影響します。
引きこもりは、若者だけの問題ではありません。
中高年での引きこもりも見られ、長期化している実態も明らかになりました。
2013年に行われた島根県の調査では、50歳代の引きこもりの人は117人、60歳代の人では115人という結果が出ています。
「引きこもり」や「うつ状態」に見える人が、実は認知症ということもあるのです。
前頭側頭型認知症は、特徴として引きこもりやうつ状態から始まることもある認知症です。
今回は、前頭側頭型認知症の特徴についてお伝えします。
前頭側頭型認知症の特徴を詳しく
前頭側頭型認知症は、64歳以下の若年性認知症の約4%を占めると言われる特徴的な認知症です。
若年性認知症では、アルツハイマー型認知症に次いで多い疾患です。
ある50歳代の男性は、突然会社を無断欠勤するようになりました。
ある60歳代の女性は、いつもカーテンを閉めた部屋で過ごすようになりました。
どちらも、その後の特徴的かつ異様な行動で認知症専門医を受診して、前頭側頭型認知症と診断されています。
この様に前頭側頭型認知症は、引きこもりやうつ病と似た状態からはじまる場合があるのが特徴です。
前頭側頭型認知症の特徴的な症状
- 意欲の低下(仕事に行かなくなる、趣味をやめるなど)
- 無関心
- これまでのその人らしくない行動(異様にはしゃぐ、悪ふざけをするなど)
- 反社会的行為(万引き、他人の庭の花を勝手に持ってくるなど)
- 食べ物の変化やこだわり(同じ物ばかり食べるなど)
- 日課への固執、時刻表のような行動
- 言葉のくり返し
- 言葉の意味が分からなくなる
- 初期では短期記憶の障害は目立たない
前頭側頭型認知症の特徴的症状の原因
前頭側頭型認知症の特徴的な症状である意欲の低下、無関心、反社会的行為といった症状は、脳の前頭葉という部分が萎縮する(小さくなる)ために現れます。
CTやMRIといった画像では、萎縮が目立たない場合もあります。
しかし、SPECTなどの脳血流をみる検査を行うと、血流の低下、活動性の低下が見られます。
前頭葉は、物事の善悪、衝動性(感情や理性)のコントロール、論理的判断をする場所です。
引きこもりは、うつ病でも見られます。
うつ病は、脳内ホルモンの「セロトニン」という物質が少なくなる病気です。
うつ病では、脳の萎縮や血流の低下はみられません。
そのため、前頭側頭型認知症の人がうつ病の薬を飲んでも、症状は改善しません。
側頭葉の萎縮や障害では、言葉のくり返しや、言葉の意味が分からなくなるといった症状が現れます。
例えば、前頭側頭型認知症の患者さんと医師の会話を再現したとしましょう。
医師「お名前を教えてください」
患者「山田太郎です」
医師「お歳はいくつになりますか?」
患者「山田太郎です」
医師「どちらから来ましたか?」
患者「山田太郎です」
といった具合です。
認知症の中でも、前頭側頭型認知症は診断の難しい病気です。
また、反社会的行為という症状から、正しく診断されないと刑罰を受けてしまう危険もあります。
前頭側頭型認知症という病気や特徴を、多くの人に知ってもらえると幸いです。