前頭側頭型認知症とうつ病は間違われやすいの?
前頭側頭型認知症には、うつ病と間違われやすい症状があります。
厚生労働省の発表では、平成23年のうつ病や双極性障害(躁うつ病)などの患者数は95万8千人に上ります。
前頭側頭型認知症よりも「うつ病」のほうが、圧倒的に患者数が多いことも、間違われやすい一因でしょう。
今回は、前頭側頭型認知症と「うつ病」についてお伝えします。
前頭側頭型認知症とうつ病の違い
自分の家族や身近な人に、次のような様子が見られたらどのように感じますか?
- 仕事が出来ない、職場に行かなくなる
- 趣味や好きなことをしなくなる
- 反応が鈍くなる
- 人と話さなくなる、人と会わなくなる
- 何かをたずねても「知らない」「わからない」と答える
- 食事の量が明らかに多くなる、または少なくなる
- 表情が暗い、無表情
- キレやすくなる
実は、上記の症状は前頭側頭型認知症とうつ病に共通の「外見的症状」です。
前頭側頭型認知症の原因は、脳の神経細胞に「異常なタンパク質の塊」や「ピック球」が出来て、脳の前頭葉と側頭葉という部分が障害されるためです。
前頭側頭型認知症は進行性の病気で、現在の医学では脳の障害を治すことは出来ません。
うつ病の原因は、セロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質の減少によると考えられています。
うつ病は重度の状態でも、治療によって治癒・改善します。
脳の前頭葉と側頭葉は、物事を判断したり感情や意欲をコントロールする働きがあります。
前頭葉と側頭葉が障害されると、前記のようなうつ病と似た症状が見られます。
前頭側頭型認知症とうつ病の「間違われやすい症状」の対策と注意点
前頭側頭型認知症とうつ病の「外見的症状」は似ていますが、対策は全く違います。
前頭側頭型認知症とうつ病の対策の違い
うつ病:無理に促さないほうがよい
前頭側頭型認知症:さりげなく促す必要がある、放っておくと着替えや入浴もしなくなる
うつ病:不安や気分の落ち込みのため
前頭側頭型認知症:他人に対する配慮や関心が無くなるため、無表情でも感じていることはある、身体のエネルギーは余っているので、イライラや易怒性につながる
うつ病:気分の落ち込みにより答えるのが辛い・億劫
前頭側頭型認知症:「考え不精」という症状、考えることをしなくなる、記憶力は保たれている
うつ病:緊張や不安により食欲不振や過食となる
前頭側頭型認知症:こだわりにより同じものばかり食べる、味の濃いものを好む傾向にある、こだわりのある食べ物を見えなくするなどの対策が必要、環境を変えるとこだわりを変えやすい
前頭側頭型認知症とうつ病の「外見的症状」は似ていますが、当事者の内面に起こっていることは、まるで違います。
前頭側頭型認知症とうつ病の違いは、「本人が辛そうに見えるかどうか」がカギとなります。