認知症の「帰宅願望」とどう向き合うか?について
認知症の人が施設や病院で過ごしているときに問題となるのが、「帰宅願望」です。
以前は「夕暮れ症候群」などと呼ばれていましたが、時間はあまり関係ないようで、昼時でも午前中にもあります。
ある介護職の人は「ここが家では無いことが分かっているのだから、それが続くように介護するのが私たちの仕事」とも言っていますが。
今回は、認知症の「帰宅願望」とどう向き合うかについてお伝えします。
認知症の人が「帰宅願望」を訴える原因
施設や病院にいる認知症の人が、「帰宅願望」を訴えるのは容易に理解できるでしょう。
ところが不思議なことに、自宅に居ても「帰宅願望」を訴える場合があるのです。
これにはいくつかの原因が考えられますが、多いケースを2つご紹介します。
原因1:記憶障害・見当識障害によるもの
自分の年が何歳かを忘れてしまうと、今一緒に住んでいる人が家族とは認識できなくなります。
そのため、自分の子供はまだ小さいと思い、学校から帰ってくるから「私も帰らなくては!」と思うようです。
原因2:今の場所の居心地が悪いことによるもの
家族が認知症の人を叱ったり、相手にしなかったりすると、自宅であっても帰宅願望を訴える場合があります。
この時の「自宅」は、安心できる場所とでも言うべき場所で、具体的にどこというワケでは無いようです。
認知症の人が「帰宅願望」を訴えたときの対応
以前の帰宅願望の対応は、時間稼ぎしたり、誤魔化したりするようなものでした。
最近は、認知症の介護についての研究が進み、時間をかけた丁寧な対話によって、認知症の人に理解してもらうという方法も行われています。
その1つが「バリデーション」です。
バリデーションとは、認知症の人の問題とされる行動の原因は「認知症の人の人生の中にある」と考えて、それを介護者(支援者)と一緒に見つけるという作業(対話)です。
本やセミナーがありますので、興味のある方は覗いてみてください。
入院中の認知症の患者さんが帰宅願望を訴えた時には、私はできるだけ「入院した経緯」を繰り返し話すようにしています。
大切なのは、「どうせ理解できない」と諦めてしまわないことだと思います。