高齢者の転倒のリスクと原因とは?
高齢者にとって「転倒する」ということには大きなリスクがあり、絶対避けなければいけないことです。
では、なぜ、高齢者はそれほどまでに転倒を避けなければいけないのでしょうか?
そして、大きなリスクと言っても、具体的にどんなことがあるのかと問われると、思い付かないことも多いと思います。
そこで今回は、高齢者の転倒によるリスクと原因。
また、それを起こさないための予防やトレーニングの方法についてお話します。
高齢者が転倒するリスクとは?
高齢者の転倒はリスクがある、と書きましたが具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。
2つの項目に分けて解説します。
道路の窪み躓いて転んでしまう、バランスを崩して転びそうになる・・・
そんな経験は誰でも一度はありますよね。
ただ、若い人であれば擦り傷で済むような転倒であっても、高齢者の転倒は大怪我に繋がることがあります。
バランスを崩したとき、手で支えようとして手首の骨が折れる。
尻餅をついて腰椎の圧迫骨折になる、などが起こり得ます。
私の祖母も、腰椎の圧迫骨折を経験しました。
その時はまだ70代だったため手術をしましたが、年齢や身体の状況によっては手術が難しいこともあるそうです。
そうなるともう、どうしようもなくなる事も考えられるので、細心の注意が必要になるんですね。
ADLという言葉を聞いたことはありますか?
ADLとは「日常生活動作」のことです。
分かりやすく言うと、
- 買い物をする
- トイレに行く
- お風呂に入る
など、日々の生活で行う動作全般を指します。
先ほど、転倒すると骨折等、大怪我に繋がるリスクがあるとお話しましたね。
怪我をすると、普段の生活に支障が出ることは言うまでもありません。
手首を痛めると、着替えやお風呂、食事などで普段より手間取ってしまいます。
高齢者の場合、筋肉を使わないとすぐに衰えてしまいます。
怪我が治っても、筋力が衰えてしまうことで、以前まで出来ていた日常生活動作が出来なくなるかもしれません。
たった一度の転倒で入院したり、寝たきりになったりする事例も珍しいことではないのです。
つい最近まで元気だったのに、数ヶ月後には自宅での生活が難しくなっていた、そんなケースを私は何度も見てきました。
このようなリスクが生じるので高齢者の転倒は避けないといけないわけですね。
では次に、そもそも、なぜ高齢者は転倒してしまうのでしょうか。
項目に分けてお話しします。
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高齢者が転倒する原因は?
それでは、高齢者が転倒してしまう原因について、大きく3つに分けてご説明しましょう。
高齢者は筋力が低下しているため、転倒しやすくなっています。
私の祖母は足を擦るように歩いていましたが、こうやって歩いている高齢者を見たことはありませんか?
膝が痛かったり、足を上げるだけの筋力がないとこうなってしまうんですね。
この歩き方になると、ちょっとした段差でも躓いてしまいます。
外だけではなく、家の階段や部屋の入り口にある僅かな段差でも注意しないと転んでしまいます。
また、筋力が低下すると転倒した時に手をついても支えきれないかもしれません。
そのせいで、手首を骨折したり、支えきれなくて顔を打ったりする可能性があるわけですね。
高齢者は服薬、お薬を飲む方が多くなります。
身体の調整機能をお薬で補う方が増えるということもありますし、疾患がある方もいます。
お薬の種類や量が多くなると、副作用の可能性が出てきます。
もちろん、副作用自体が重篤な事態を引き起こすことはないと思いますが、立ち上がる時にふらついたり、めまいがしたりするかもしれません。
多くの高齢者は何かしらのお薬を飲んでいますから、お薬が変更になったり量が増えたといった時には注意してください。
病院を受診する際には主治医の先生に相談しても良いかもしれません。
世界的に流行している感染症の影響か、運動不足を感じている高齢者も増えてきているようです。
運動不足になると、筋力の低下を招きますから、その分転びやすくなります。
ちょっとした体操や散歩をするだけでも、かなり違うと思いますので、運動不足を感じている高齢者がいれば提案しても良いかもしれませんね。
さて、このように転倒に至る原因はいくつかありますが、具体的にどのように予防すれば良いのでしょうか。
項目を分けてお話しします。
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高齢者が転倒するのを予防するには?
今、高齢者がお住まいの部屋の「環境」はどうなっていますか?
床に新聞紙や文房具が転がっていませんか?
あるいは、ちょっとした段差等はないでしょうか。
新聞紙は滑りやすく、本当に危ないですよ。
祖父母どころか私が転んだ経験があるくらいです。
高齢者は、視力や注意力も低下していますから、歩くのに邪魔な障害物をちゃんと片付けるようにしてください。
また、段差があるようであれば簡易的な手すりをつけたり、スロープを設置したりなどの対策をした方がいいでしょう。
転倒事故の多くは、自宅で起こるとされています。
まずはしっかりと生活する自宅の環境を整えましょう。
自宅の生活環境を整えても絶対に転倒しない、と断言は出来ません。
なので、可能な限り目を離さないようにしてください。
例えば、自宅の転倒事故は浴室で多く発生しています。
なので、入浴の際は必ず付き添うようにする、トイレの際には、行く前に声掛けをしてもらうなどしてトイレの外で待ってもらうなどしましょう。
私の祖父は元気だったのですが、祖母が良く付き添っていましたね。
本人は恥ずかしいと最初のうちは思っていたそうですが、すぐに慣れたようです。
事故を防ぐためにも一度考えてみてください。
また、屋外に行く時には目的や時間、何時くらいに戻ってくるなどしっかり情報を共有することが大切です。
もし万が一の時のために、携帯電話を持ち歩くようにすれば安心出来ますね。
環境を整える、可能な限り目を離さないようにする。
いずれも転倒防止のために有効ですが、一番良い方法はやはり、高齢者が自分で転倒を防止することです。
どんなに頑張っても高齢者が1人になるタイミングはありますし、自分で解決出来ればそれが一番良いですよね。
その為に重要なことが転倒防止のトレーニングです。
ですが、転倒防止のトレーニングといってもどのようなことをするのか、中々イメージが湧かないかもしれませんね。
具体的に、どうすれば良いのでしょうか?
高齢者の転倒予防トレーニングのやり方は?
転倒防止のトレーニングは、主に下半身の筋力強化、バランス感覚を鍛えることが大事になります。
まずは、下半身の筋力強化には椅子を使ったトレーニングが有効です。
椅子に座ってもらい、片方の足をつま先から上げてもらいます。
最初の方は、数秒間の短い時間でも大丈夫です。
慣れてきたらちょっとずつ時間を増やしてみましょう。
片方の足が終わったら次の足を上げてもらい、何度か繰り返します。
次に、バランス感覚を鍛えるトレーニングですが、これも自宅で出来ます。
壁に手を付いて、片足立ちをしてみましょう。
椅子を使ったトレーニング同様、最初は短い時間で大丈夫です。
トレーニングをする際、転倒には注意しましょう。
誰かが付き添ったり、後ろにクッションを置いて行った方が安心出来るでしょう。
このような椅子を使ったりバランス感覚を鍛えるトレーニングやはデイサービスや老人ホームのレクイエーションでも良く行います。
私の祖母もデイサービスで経験があったようなので、高齢者としてもとっつきやすいかもしれません。
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高齢者が転倒を繰り返す場合はどうすればいい?
環境を整えたりトレーニングを行なったりと対策を行なっても高齢者が転倒を繰り返すことがあります。
ではなぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
大きい理由としてはご本人の認識ですね。
高齢者にも当然若い頃があり、若い時の自分と高齢者となった自分のイメージが食い違っていることがよくあります。
以前は出来たことだから、と思ってやってみると出来ずに転倒に繋がることがあるのです。
類似した理由に、認知症の進行も挙げられますね。
認知症は関係ないのでは?と思うかもしれません。
ですが、認知症が進行すると判断力が衰えたり、身体の機能が低下しますから転倒に繋がります。
認知症の場合、短期記憶の保持が難しくなるケースも多いので、失敗してももう一度同じことをやってしまうんですね。
私の祖父も、認知症がありました。
幸いなことに足腰は丈夫だったので、重大な事故には繋がることはなかったのですが、傍目から見て危ないことをするので、非常に気を遣った記憶があります。
じゃあ、高齢者が繰り返し転倒をする場合、どうすれば良いのでしょうか?
まず、直接的に『危ないからやっちゃ駄目だよ』と言うのは避けた方が良いでしょう。
ご本人の自尊心が傷つきますし、認知症の高齢者の場合は「反発心」が芽生えるかもしれません。
考え方としては、転倒するシーンだけではなく、1日単位で考える転倒防止を考えましょう。
また、背景を探ることも大事ですね。
高齢者がいきなり立ち上がったりすると危ないですが、何故立ち上がったのかを考えた方がいいでしょう。
トイレに行きたいのか、水を飲みたいのかちゃんと理由があるはずです。
水分補給やトイレの時間などをある程度時間を決めてコントロールし、フォロー出来ることが出来れば転倒の可能性も低下しますよ。
それでは、高齢者の転倒について、最後にまとめましょう。
まとめ
今回は、高齢者の転倒のリスクと原因、予防やトレーニングのやり方についてお話ししました。
高齢者の転倒は、大怪我やADLの低下に繋がります。
転倒の原因は、身体能力の低下、服薬、運動不足などが挙げられます。
転倒を防ぐために生活環境を整え、可能な限り目を離さないようにしてください。
ただ、一番良いのは高齢者が自分で転倒を防止できるようにトレーニングすることです。
椅子や壁を使って下肢筋肉やバランス感覚を鍛えるトレーニングはデイサービスで行うこともあるので、高齢者も受け入れやすいでしょう。
転倒を繰り返す高齢者の場合、一日単位で転倒防止を考えましょう。
食事やトイレの時間など時間を決めれば予想外の出来事が起こりづらくなり、フォローもしやすくなります。
転倒防止はすぐに効果が現れるものではありません。
長い目で高齢者ご本人と協力して改善していきましょう。