万引きから発覚する認知症について
万引きは、「中高生の犯罪」と思われがちですが、高齢者の人口割合が増えるにつれて、高齢者の万引きの件数も増加しています。
高齢者が万引きする原因は、経済的な困窮である場合が多く、万引きする品物も食品が多いようです。
ところが、認知症の症状で万引きを繰り返すというものがあり、これは「前頭側頭型認知症(ぜんとうそくとうがたにんちしょう)」で見られます。
前頭側頭型認知症は、医師の間でも認知度が低く、診断できる専門医も少ないため、「責任能力あり」と考えられて実刑になる場合もあります。
今回は、万引きから発覚することが多い、前頭側頭型認知症について説明します。
万引きから認知症が発覚した場合の責任能力は?
2014年5月の産経新聞のWebに、75歳の女性の万引きについての記事が掲載されました。
これによると、1審では認知症であることが認められたが、判断能力もあったとされて、実刑の判決がくだされたとあります。
また、56歳の市役所職員の男性がチョコを万引きして、起訴には至らなかったが市役所を懲戒解雇されたというケースがあります。
実は、最終的にはどちらのケースも、前頭側頭型認知症という診断とともに、責任能力が無かったと理解されています。
75歳の女性の場合は、2審で保護観察付きの執行猶予となり、デイサービスに通っているということです。
56歳の男性は、事件後に家族が万引き時の様子を質問しても、話のつじつまが合わなかったり、話がコロコロと変わったりした事を不審に思い、病院に連れて行き、前頭側頭型認知症と診断されました。
このため、市役所を懲戒解雇されたのは不当であるという訴えを起こし、3年掛かって身分を回復しました。
前頭側頭型認知症と診断された人には、多くの場合、それよりも数年前に「その人らしくない言動」が見られるなどの兆候が現れます。
家族や周囲の人がそれを見逃さずに、早期に「前頭側頭型認知症」の診断を受けておくと、このような犯罪行為をおこしても責任能力が無いことが理解されやすいでしょう。