認知症と嚥下障害の関係について
認知症と嚥下障害という言葉をご存知でしょうか?
「嚥下(えんげ)」とは、飲み込むことです。
嚥下障害によって、食べ物の飲み込みが障害されるということは、命の危機に直面することになります。
認知症で嚥下障害を併発すると、肺炎を起こすことも多くなります。
今回は、認知症と嚥下障害の関係や注意点についてお伝えします。
認知症の嚥下障害とは具体的にどんなこと?
認知症と関係する嚥下障害では、具体的にどんなことが起きるのでしょうか?
食事を「食べる・飲み込む」という行為を「摂食(せっしょく)・嚥下」といいます。
摂食・嚥下障害には、認知症により食べ物を認識しない、意欲が低下して食べないということも含まれます。
しかし、今回は、口に入ってから食道・胃に届くまでの「摂食・嚥下」に注目してお伝えします。
摂食・嚥下の仕組み
(1)先行期(認知期)
食べ物の温度や形、固さを判断します。
(2)準備期(咀嚼:そしゃく期)
噛むことにより、食べ物と唾液が混ざります。
(3)口腔期
舌の働きで食塊を咽の奥(咽頭部)に移動させます。
(4)咽頭期
食塊を咽の奥(咽頭部)から食道に送ります。
咽頭部は、呼吸のための気道と食べ物が通る食道が交差する部位です。
空気と食べ物の交差点では、誤嚥(ごえん)という事故の発生が多くなりがちです。
ここで食べ物や飲み物が間違って気道に入ると、ムセて咳が出ます。
(5)食道期
食塊は食道のぜん動運動で胃に運ばれます。
認知症の中で嚥下障害を起こしやすいのは、脳血管性認知症とレビー小体型認知症、パーキンソン症状のある認知症です。
これらの認知症では、マヒや振るえなどにより嚥下障害を起こしやすくなります。
脳血管性認知症などの人が、食事中にムセや咳が出ていたら嚥下障害を起こしているかもしれません。
認知症で嚥下障害がある場合の対処法と注意点
認知症の嚥下障害に対しては、どのように対処すればよいのでしょうか?
嚥下障害によって起こる肺炎を、「誤嚥(ごえん)性肺炎」といいます。
誤嚥性肺炎は、飲み物や食べ物、自分の唾液が間違って気道から肺に入るために起こります。
認知症で嚥下障害がある場合は、言語聴覚士によるリハビリテーションが有効です。
言語聴覚士(ST)は、言語障害・音声障害・嚥下障害のリハビリを行う専門職です。
嚥下障害があるときの対処法や注意点
(1)うがい、歯磨き、入れ歯の手入れをして、口の中を清潔に保つ
(2)口・舌や顔・首の筋肉トレーニングやストレッチを行う
おしゃべりしたり、笑ったりすることもとても良い
(3)食事量が少ない時には、高カロリーゼリーや栄養ゼリーなどで補給する
(4)サラサラした液体はムセやすいので避ける
味噌汁やジュースにはトロミ剤を使いトロミをつける
(お茶はトロミをつけてもムセやすいので注意する)
(5)食事の時には、食べることに集中できる環境にする
食事中に話しかける時には、飲み込んだことを確認してからにする
高齢になると、口の周りや舌・咽の筋力が低下して嚥下障害を起こしやすくなります。
高齢で認知症があると、さらに嚥下障害が強くなる場合があります。
嚥下障害になると、低栄養になったり誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。
嚥下障害を防ぐためには、口の中を清潔に保つことや顎・舌・首の筋肉を鍛えることが有効です。