認知症の見当識障害について
認知症の見当識障害という言葉をご存知の方もいらっしゃることと思います。
「ここはどこ?私は誰?」
ギャグなどでもよく使われるセリフですね。
今がいつで、ここはどこで、自分と周囲の人との関係はどうなっているのか。
これを「見当識」といいます。
認知症で、見当識に障害が起こることを「見当識障害」と言います。
その結果、日常生活に困難が生じます。
今回は、認知症の見当識障害についてお伝えします。
認知症の見当識障害とは何か?
認知症の見当識障害とは、具体的にどのようなことを指す言葉なのでしょうか?
「見当識」とは、物事を判断する為に必要な能力の1つです。
見当識障害が起こると、時間、季節、場所、人との関係性などが分からなくなります。
認知症の見当識障害では、早期から時間の感覚が分からなくなります。
日付を間違えるということは、誰にでもあることですね。
しかし、月を間違えることは少ないでしょう。
認知症の見当識障害では、今の季節を間違える(分からない)ということも起こります。
時間の見当識の次には、場所の見当が付きにくくなります。
認知症が軽度の時期には、「自宅ではない」ことはわかるでしょう。
認知症が進むと、明らかに自宅とは違う場所にいても自宅と思いこんだり、自宅にいるのに「家に帰る」と言ったりします。
さらに見当識障害の症状が進むと、自分と人との関係性が分からなくなります。
顔は覚えていても、親戚なのか友人なのかが分からないなどです。
認知症の見当識障害に対しての対処法や注意点
認知症の見当識障害に対しての対処は、どのように考えれば良いのでしょうか?
時間の見当識障害になると、夜中なのに買い物に行こうとするなどの行動が見られます。
季節の見当識障害になれば、暑いのに服をたくさん着込んだりということが見られます。
場所の見当識障害では、自宅であってもトイレに迷うなどが起こります。
このような見当識障害のある認知症の人に、「しっかりして」「この人は○○(氏名)でしょ!」などと怒ったりしてはいけません。
見当識障害のある認知症の人は、なぜ怒られているのか分かりません。
反発したり、暴言・暴力の誘因になったりして、介護にも支障が出ます。
分かりやすくする工夫をしたり、さりげなく誘導するなど、冷静に対応しましょう。
時間の見当識障害には
- 24時間表記や日付の表記がある時計にする
- 「今日は5月5日で、端午の節句だね」などと、季節を盛り込む声掛けをする
- 窓には雨戸でなくカーテンにするなどして、すぐに外が見えるようにする
- 季節や気温にそぐわない服装をする場合には、「こちらの方が似合っていますよ」などと誘導する
- 暑い季節には、水分補給につとめる
場所の見当識障害には
- 「トイレ」などと、見やすい位置に張り紙をする
- 散歩の時などには、付き添いをする
人の見当識障害には
- 「お友達の○○さんが来てくれたよ」などと、事前にさりげなく紹介する
- 「この人は誰だと思う?」「忘れちゃったの?」などは、認知症の人にプレッシャーをかけるので避ける。
普段なら全く意識せずに生活している、「見当識」。
しかし、この見当識が障害されると、すぐに生活に支障をきたします。
認知症の人の見当識障害には、工夫と適切な声掛けなどで、賢く対処しましょう。