認知症じゃなくても「せん妄」は起こる?
認知症と似た症状の「せん妄」をご存知ですか?
「親が入院したら、突然変なことを言ったり暴れたりした。」
こんな経験をお持ちの方は、意外と多いのではないでしょうか。
「入院したら認知症になった」と、病院にクレームをつける家族も…。
高齢者が入院した時などに、認知症のような症状を起こす場合があります。
これを「せん妄」といいます。
今回は、認知症とせん妄の違いや対処法についてお伝えします。
認知症とせん妄の違いとは?
せん妄は、一次的な意識障害の状態です。
認知症のある場合は、せん妄を起こしやすくなります。
しかし、せん妄を起こした人すべてが認知症ではありません。
せん妄は若い人でも起こします。
若い人がせん妄を起こすのは、大きな手術後など全身状態がとても悪い場合です。
アルコールや薬物の中毒の状態でも、せん妄を起こしやすくなります。
せん妄を起こす直接的因子
(1)脳神経障害
高齢になると、隠れ脳梗塞などで脳の機能が低下しているケースが多くなります。
認知症も脳に障害を起こしている状態なので、せん妄を起こしやすくなります。
パーキンソン病やてんかんなどの、神経の障害でもせん妄が起こります。
(2)代謝障害
糖尿病・腎機能障害・肝機能障害などがある場合も、せん妄を起こしやすくなります。
(3)呼吸・循環器障害
喘息などの慢性的な呼吸器疾患や心疾患がある場合も、せん妄を起こしやすくなります。
(4)薬剤による副作用
パーキンソン病などの神経疾患や精神疾患で薬を飲んでいると、薬剤の副作用によりせん妄を起こす場合があります。
せん妄を促進する因子
(1)炎症反応
カゼや肺炎、骨折や関節炎などでは、体内に炎症が起こっています。
せん妄の直接因子を持つ人が、炎症を起こすとせん妄を起こしやすくなります。
(2)環境変化
入院、引っ越しなどの環境変化で、せん妄が起こりやすくなります。
(3)心理的ストレス
家族や友人との死別など、大きな心理的ストレスでもせん妄が起こりやすくなります。
認知症に間違われやすいせん妄の対処法と注意点
認知症の症状は、少しずつ現れます。
突然の暴力や暴言、夜中にわけのわからないことを言い出すなどの場合、せん妄を起こしていると考えるほうがよいでしょう。
せん妄を起こしている場合は、次のように対処しましょう。
- 部屋を明るくする
- 興奮・暴力が強い時には、離れて見守る
- ゆっくり、しっかりした声で話しかける
せん妄を防ぐためには、普段から次のことに注意しましょう。
- 全身状態の改善(脱水や便秘にも注意)
- 出来るだけ慣れた環境にもどす(入院の際には、使い慣れた枕や毛布を持ち込むなど)
- 昼間に起きて、活動するように工夫する
- 危険な物を近くに置かない(刃物・重たいもの・壊れやすいものなどに注意)
高齢者や認知症の人が体調を崩して入院すると、せん妄を起こしやすくなります。
せん妄になると、突然興奮したり暴力が出たりするので、認知症が急激に進行したと思われがちです。
せん妄は、体調が良くなり環境が整うと改善する症状です。