認知症で嗅覚が悪くなる?
認知症になると嗅覚が悪くなっていくことがあります。
- 味を感じにくく、食欲が無い。
- 食べ物の腐った臭いが、判断しにくい。
このように嗅覚や味覚がおかしい方が身近にいらっしゃいませんか?
それは、認知症が始まっているサインかもしれません。
認知症の人には、嗅覚障害があることが分かっています。
なぜ、認知症になると臭いが分からなくなるのでしょう。
今回は、認知症と嗅覚異常の関係についてお伝えします。
認知症の人が嗅覚異常になる原因は?
認知症の人が嗅覚異常になる原因は何でしょうか?
まず、認知症の方のお話の前に、嗅覚の仕組みをみていきましょう。
臭い物質が、鼻腔(びこう)の奥の嗅上皮(きゅうじょうひ)というセンサー部分に触れます。
センサーが働くと、嗅上皮の上にある嗅球(きゅうきゅう)という器官で情報処理されます。
その情報は、嗅神経によって脳に伝えられます。
臭いの情報は脳の中心部を通り、脳の嗅覚野という部分で判断されます。
このことから、嗅覚異常(障害)の原因は次の3つになります。
- 呼吸性嗅覚障害(センサー異常:鼻の粘膜の炎症などで障害される)
- 抹消神経性嗅覚障害(情報処理異常:嗅球や嗅神経の異常)
- 中枢神経性嗅覚障害(判断異常:脳細胞の障害で判断できない)
認知症で起こる嗅覚異常は、中枢神経性嗅覚障害です。
認知症の中でも嗅覚異常を起こしやすいとされるのは、アルツハイマー型認知症とパーキンソン病を伴う認知症です。
アルツハイマー型認知症は、脳の中心部のやや下にある海馬という部位が萎縮(いしゅく:ちぢむこと)します。
認知症の初期の場合には、脳の萎縮は見られません。
しかし、血流が少なくなっていることが分かっています。
血流が少ないということは、その部分の活動が低下していることを示しています。
嗅神経によって運ばれた臭いの情報は、脳の中心部を通って嗅覚野に伝わります。
脳の中心部の血流が少ない場合、近くにある嗅覚野の血流も少ないと考えられます。
そのため、臭いを判断できにくくなると考えられます。
嗅覚異常と認知症の早期発見対策や認知症の改善方法
現在、嗅覚のテストで認知症を早期発見できないかという研究が行われています。
神戸大学大学院の耳鼻咽喉科・頭頚部外科では、臭いと初期の認知症の関係について研究が行われました。
その研究によると、メントール、カレー、みかんの臭いに優位性が出たとあります。
初期の認知症の嗅覚異常は、自分では分かりにくいとされます。
身近な人から「臭いに鈍感になった」と言われたら、初期の認知症を疑ってみる必要があるかもしれません。
これとは逆に、臭いを利用して認知症を予防・改善しよう、という研究もされています。
アロマテラピーを用いて嗅覚を刺激することにより、脳の中心部の血流を促そうという考え方です。
認知症の方に嗅覚異常があると、食事の味を感じにくく食欲が低下してしまいます。
また、腐ったものを食べたりして、体調を崩しかねません。
臭いが感じにくいという状態を、放置すべきではないかもしれませんね。