認知症の易怒性について
認知症の方の「易怒性」という言葉をご存知の方もいらっしゃるでしょう。
あなたは、身近にいる認知症の方が怒りっぽいなと感じたことはありませんか?
高齢になってくると、自分の感情をコントロールしにくくなり、怒りっぽくなったりすることはよくあります。
しかしそれとは別に、短い期間で突然人が変わったように怒りっぽくなったりするのは、認知症の初期症状にみられる「易怒性」かもしれません。
まずこの「易怒性(いどせい)」とは一体なんでしょう。
易怒性とは、些細なことですぐに怒りを露にする性質を意味する言葉です。
簡単に言えば、一言で「怒りっぽい」ということですが、認知症の初期症状にはこの易怒性が現れるのです。
ここでは、認知症の易怒性についてご説明します。
認知症の易怒性を体験した例
認知症の易怒性に、私も何度も遭遇したことがありますのでご紹介します。
私が訪問介護でヘルパーとして働いていた時のことです。
そのときに受け持っていた一人暮らしのおばあちゃん(Aさん)が、ひどい認知症で易怒性が強い方でした。
私たち職員は毎回決まった曜日の決まった時間にお伺いするのですが、Aさんは認知症の為すぐに忘れてしまい、毎回「よそ者だ!」と騒ぎ立ててしまうため、職員もお手上げの状態だったのです。
Aさん宅に着くと目が合っただけで怒り出し、「話すことは何もないから帰ってください。」と冷静に話したかと思えば、「帰れって言ってんのよ!」と職員の腕を掴んで爪で引っ掻いたりしたこともありました。
あまりにも易怒性が酷いときは、ご家族に連絡をして支援をキャンセルする時もありました。
このように、認知症の方が原因もわからずに怒っていることが突然多くなってきたら要注意です。
少しでも易怒性が現れてきたのかな?と感じたら、すぐに認知症専門医に診てもらうことをお勧めします。
認知症による易怒性の対処法とは?
では、実際に認知症の方に易怒性が現れてしまったときはどうすればいいのでしょう。
易怒性に対して医師がお勧めする対処法は、
- 「冷静に対処する」
- 「怒る前に話題を変える」
- 「距離を置く」
- 「否定しない」
などが挙げられます。
しかし、実際に私が実践していた対処法は「怒る前に話題を変える」と「否定しない」です。
まず「怒る前に話題を変える」の対処法です。
ある程度コミニュケーションがとれてくると、顔つきや口調で易怒性が現れるタイミングがわかるようになりました。
なので、怒りそうだなと感じた時点で瞬時に話題を全く違うこと(例えば、その人が昔から好きだった事の話など)に変えてしまい、怒ろうとしたことを忘れさせていました。
この対処法を実践していた理由は、個人的に一番すんなりと認知症の方の易怒性を抑えることができたからです。
忙しいときなどは、よくこの対処法を使っていました。
そして、認知症の易怒性に一番重要だと思う対処法は「否定しない」ことだと思います。
否定は、言い方や顔色ひとつで間違いなく易怒性を引き出してしまう原因になります。
同じ否定でも、「そうじゃないよ!」「違うよ!」という言い方ではなく、「それもいいね!あ、でもこっちもよさそうじゃない?」など、一度肯定してあげてから別の選択肢を提案してあげると少しは抑えることができるのかなと思います。
認知症ですぐに忘れてしまうといえども人間なので、やはり蔑ろな態度を取られてしまうと易怒性が現れやすいように思います。
私は人格を尊重してあげられる対応が、認知症の易怒性を抑えられる一番のポイントになるのではないかと考えます。