認知症と統合失調症の違いについて
認知症と統合失調症は、間違われることが多いようですが、違いはどこにあるのでしょうか?
認知症と統合失調症、それぞれの疾患の症状をご説明します。
認知症
認知症は誰にも起こる可能性があり、さまざまな病気により、脳の細胞が壊れることによって発症します。
- 加齢によって発症率が高まる(統計によると、85歳以上では4人に1人に認知症の症状があります)
- 知的機能の障害がある
- 記憶障害から始まる
- 理解力、判断力の低下がある
- 早期ほど薬で進行を遅らせることができるが、完治は望めない
※認知症の症状を示す、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、甲状腺などの疾患は、場合によっては治療が可能です
続いて、統合失調症について詳しくご説明しましょう。
認知症と統合失調症はよく間違われやすい?
認知症と間違われやすい統合失調症は精神疾患のひとつです。
統合失調症は、脳の構造や働きの異常が原因と考えられるようになってきました。
- 思春期から30代に発症することが多く、全体の70~80%を占める
- おおよそ100人に1人弱がかかる頻度の高い病気である
- 陽性症状では幻聴、幻視、妄想がある。陰性症状では感情の平坦化、意欲の低下がある
- 自分が病気だと認識できない場合がある
- 新しい薬や心理的社会的ケアの進歩により、初めて統合失調症が発症した患者のほぼ半数は、完全かつ長期的な回復が期待できるようになっている
例えば、認知症のひとつであるレビー小体型認知症にも幻視や妄想の症状があります。
また、認知症と総合失調症の双方に判断力や注意力の低下がみられます。
症状のなかには似通った部分もありますが、認知症と統合失調症は全く違う病気だと理解してください。
認知症と統合失調症の見分け方
認知症と統合失調症は、似通った部分がありますが異なった疾患です。
まず、認知症と統合失調症の見分け方を具体例からご説明しましょう。
・Aさん
「昨日のことだけど、家の廊下の奥にダンスホールが出来ていた。うるさい音楽がかかっていて、そこで薄着の若い女が3人踊っていた。女たちは私の財布を狙っている」
・Bさん
「家の冷蔵庫には弁護士がいる。姿も形も見えないけれど、確かに居る。弁護士は私に色々なことを話しかけてくる。監視もされているようだ」
上記のどちらかが認知症もしくは統合失調症です。
Aさん、Bさんの訴えはどちらも妄想です。
認知症や統合失調症の方の妄想はびっくりするような内容が多く、実際にはありえない、突拍子もないものです。
しかし、おふたりの疾患は全く別のものです。
Aさんが認知症、Bさんが統合失調症です。
認知症の方の妄想は、被害的な内容のもの、物盗られ妄想が多いことが特徴です。妄想の内容が一貫していないことも多く、コロコロ変わります。
一方、統合失調症の方の妄想は、感情の不安定さと思考の混乱がみられますが、体系的な妄想が多いのが特徴です。妄想の内容も一貫しています。
また、統合失調症の方は知的機能の障害がないため、日時や場所などをしっかり理解されており、買い物や電話をする能力は保たれています。
認知症と統合失調症の方への対応において共通しているのは、どれほど現実にありえない妄想でも否定や訂正をしてはいけないことです。
「新しい世界だな」と考えて、楽しく話を聞いてくださいね。
両者をはっきりと見分けるためには、脳神経外科やもの忘れ外来などの専門医を受診してください。
早期治療を開始することによって、認知症の進行を緩やかにすることや、統合失調症の陽性症状が軽減することがあります。