認知症で物を集めるという症状について
認知症の方が、やたらと物を集めるというケースがあります。
たとえば、あるおじいちゃんの家には、使われていないハサミが200本、ロープが100巻もあります。
そのおじいちゃんには認知症があり、欲しい物を集めるために毎日ホームセンターで購入しているからです。
別のおばあちゃんは、白い紙を集めています。
そのおばあちゃんも認知症で物を集めるクセがあり、白い紙をどんどん重ねるため、部屋の半分は白い紙で埋まっています。
他にも、みかんを集めるおじいちゃんがいます。
近所の畑から盗ってくるので、ご家族にとっては頭の痛い行動です。
そのおじいちゃんにも認知症があり、みかんをただ集めているだけなので、みかんは次々と腐っていきます。
ここでは、そんな認知症の方が物を集めるということについてご説明します。
認知症で物を集める「収集行動」とは?
認知症の方は物を集めるのがお好きです。
私たちにとって価値が分からないものがほとんどで、落ち葉や石ころ、ティッシュペーパーや空き瓶、ゴミなどを拾ってくることがあります。
1度や2度の「物を集める」という行動であれば、ゴミ拾いをしたのかな、と思う程度ですが、日々のこととなればご家族は大変困惑するでしょう。
認知症の方がゴミを集める意味が理解できないから当然のことです。
しかも厄介なことに、認知症の方は集めたゴミを捨てると立腹するのです。
場合によっては、ご家族を泥棒呼ばわりすることもありますので、困った症状のひとつですね。
認知症の方が物を集めることを「収集行動」といいます。
この収集行動は、執着している物であったり、節約のためであったりとさまざまな理由があります。
しかし、同じ物を何度も何度も集めることと記憶障害及び理解・判断の障害には関連性があります。
認知症になり、脳の側頭葉にある海馬という領域の細胞がこわれると、新しいことが覚えられません。
認知症の方は、物を集めたことを覚えられず、すぐに忘れてしまいます。
また、判断力も低下するので、収集行動はよりエスカレートするのです。
認知症の方が物を集めるときの対応について
認知症の方が物を集めるときの対応は、視点を変更が重要です。
認知症の方が集める物は、私たちにとってゴミの山にしか見えなくても、宝物だと理解してください。
皆さんが大切にしている宝物を隠されたり、捨てられたりしたら、誰でも立腹しますよね。
ですから、認知症の方にとっての宝物をご本人の前で捨てないようにしてくださいね。
認知症の方の収集行動には、記憶障害と理解・判断の障害が関係しているとご説明しました。
認知症の方は、集めたり拾ったりすることに熱中しているので、ご自分が集めた物の数を把握していない場合が多いのです。
認知症の方が外出しているとき、トイレを利用しているときなどに、こっそりと少しずつ処分するようにしてみましょう。
もしくは、認知症の方が集めている物が不潔であったり、大きいサイズのため部屋を圧迫していたりする場合にのみ、こっそりと少しずつ処分すると良いでしょう。
認知症の方が取集している物が危険でないかぎり、暖かい気持ちで見守ることも必要です。
「まあ、いいか」は、認知症の方を介護するときの大事な呪文です。
認知症の方が物を集めることを「まあ、いいか」と見守ることで、その方との関係がこれまでより良好なものとなるはずですよ。