認知症の被害妄想について
認知症の代表的な症状として、「被害妄想」があります。
認知症の方の介護をされている方の中で、この被害妄想に頭を悩ませている方は多いと思います。
では、認知症の被害妄想による症状とは、どんなものがあるのでしょうか。
まず、被害妄想というのは、マイナスのことで現実には絶対にありえないことを脳が現実だと思い込んでしまうことです。
本人は現実のことだと思い込んでいるため、そんなことはないといくら説明してもわかってもらえず、むしろ、「嘘を付いているって言うのか!」などと怒り出してしまう方もいます。
ここでは、そんな認知症による被害妄想についてご説明します。
認知症で被害妄想になった具体例
私が関わってきたことのある認知症患者の中で、一番多かった被害妄想は「物取られ妄想」でした。
私の祖母は、入院中「ここの引き出しに何百万も入れてあったお財布を、今朝医者のふりをした若い男の人が来て持っていった!警察に連絡してくれ!」と、母に発狂していたことがあります。
祖母は元々、お財布にそんな金額を入れていたことは一度もありませんし、ましてや病院のお金関係は母が管理していたので、絶対にありえないことでした。
しかし、母が何度説明をしても理解できず、「いいからとにかく早く警察に連絡してくれ!」と、そればかり言っていました。
介護士として働いていたときにも、「隣の部屋の○○さんが、私のお金を盗んだ!」と、怒っていた人や、「家に勝手に入ってきたホームレスが、私が大事にしていた着物を一式盗んでいった」など、様々な被害妄想を目の当たりにしてきました。
これらの被害妄想の原因としては、記憶障害(物忘れ)、思考能力の低下、日々の生活からくる不安など、さまざまな要素が重なっているとされています。
認知症による被害妄想の対処法
被害妄想の中でも最も多いのが、「物取られ妄想」です。
対処法や注意点などをあげてみましょう。
被害妄想をしてしまう根本的な原因として、介護されている(世話になっている)ことに負い目を感じている自分と、「いや、そんなことはない(思いたくない)」という拒否する自分が格闘している、ということが背景にあるようです。
この現実を受け入れることができないことから、逆の妄想をするようになり、「迷惑かけられているいるのは自分だ。」と思い込んでしまい、被害妄想を引き起こします。
「物取られ妄想」を未然に防ぐには、「介護されている(世話になっている)負い目」を取り除いてあげることから始めるとことです。
些細なことでも構いませんので、頼めることをお願いしましょう。
そしてそれについて、「助かったよ、ありがとう。」と、一言添えてあげてください。
本人の存在価値を少しでも見出してあげることが、少しでも症状を和らげられる方法です。
そして、被害妄想が現れたときの対処法としましては、どんな被害妄想に対しても、決して「否定をしない」ことが大事です。
本人は自分が間違っているとは微塵も思っていないので、妄想に対して「そんなことない」と否定をしてしまうと、もちろん怒りますし、ひどいと「バカにされている」と思ってしまうこともあります。
そこから怒りが助長してしまい、症状の悪化や暴力や暴言にも発展しかねません。
親や祖父母など、身内に認知症による物取られ妄想をする患者がおり、介護をしている方の中には、身内ということもありなかなか思うようにいかないことも多々あるかと思います。
その場合は、介護者が少しでも患者から離れ、リフレッシュするということもとても大事なことだと思います。
相手の気持ちになって考え行動することで、防げる方法はたくさんあります。
ぜひ参考にしてみてください。