認知症の服装にまつわる悩みについて(原因編)
認知症になった方の服装についての悩みはとても多いです。
ふたりのおばあちゃんの服装の話をご紹介します。
Mさんの服装の場合
Mさんは認知症があり、息子さんと二人で暮らしていました。
息子さんが仕事で出かけているときに、お一人で外に出てしまいました。
8月の真夏日に、10枚の上着を重ね着しており、汗だくになっていたところを保護されたのです。
重ね着していた上着には、ジャンパーやコートが含まれており、Mさんは脱水寸前でした。
Tさんの服装の場合
Tさんは認知症があり、一人暮らしをしています。
Tさんは1年中、上下の衣類をそれぞれ4~5枚重ねて着用しています。
リハビリパンツという紙の下着を使用していますが、布の下着を2枚着用した上からリハビリパンツをはいています。
排泄の失敗時に備えた、リハビリパンツ本来の役目が果たせていないため、いつも尿臭がしています。
認知症の方が正しく衣類を着用できておらず、一見びっくりするような服装になっていることがあります。
認知症で服装が正しく出来ない理由は?
認知症で服装が正しく出来ない理由は何でしょうか?
上記以外にも、襟口から腕が出るように衣服を着用する、上着を足から通そうとするなど、服装に関するトラブルは、認知症の方を介護していれば日常茶飯事です。
しかし、介護者にとっては、日々のことであるからこそ、悩みが深く負担も大きいものです。
認知症の方が服装を正しく着用できないのは、認知症の中核症状である実行機能障害(遂行機能障害)が原因です。
実行機能とは、計画を立ててものごとを進めたり、手順を踏んで目的を達成したりすることです。
実行機能障害があると、段取りができなくなり、順番を間違えてしまいます。
実行機能障害があっても、適切な対応ができれば服装の悩みは解決します。
次章では対応方法をご説明します。
認知症の方の服装にまつわる悩みについて(解決編)
認知症の方の服装の悩みの解決方法ですが、認知症の方ができることを活用する支援を心がけてください。
例えば、「明日は寒いから、暖かいセーターもいいよね」と声をかけることにより、今が冬であること、暖かい服装を選べば良いことが伝わります。
認知症の方が「どれでもかまわない」といわれた場合でも、衣類を見せることにより、ご本人の趣味が反映された服装選びができる場合が多いものです。
また、箪笥(たんす)などに収納している衣類の名称を、シールや紙に書いて貼っておくことでより衣類を選びやすくなります。
認知症の方が衣類を着用しているときに、「そのカーディガンは上に重ねたほうが素敵だよね」と声かけすることで、手順を間違うことが少なくなります。
認知症の方は、失敗を指摘されたり、非難されたりするとさらに混乱してしまうので、優しく話しかけてくださいね。
認知症の方の心身への変化の対応も必要です。
認知症が進行すると、うまくボタンが掛けられなくなります。
前開きの上着であれば、ボタンの代わりにマジックテープを使用する、ズボンはウエストをゴムにするなどの配慮があれば、ご自分で衣類の着脱が可能です。
認知症の方はさまざまな感覚も弱まってきます。
むくみ(浮腫)を避けるために袖口や靴下のゴムをゆるめると良いでしょう。
現在では、ファッションは多様化しています。
認知症の方がちょっと変わった服装でも、「新しい装いだね」という気持ちで接することも必要です。