認知症と難聴の関連性について
認知症と難聴にはどのような関係があるのでしょうか?
まず、あなたは「耳が遠い」という言葉を使ったことがありますか。
耳が遠いとは、耳が聞こえにくい、聴力が低下している状態を表しており、難聴とも言います。
加齢とともに、音と関係のある有毛細胞が傷つくと聴力は低下します。
加齢を原因とした難聴を「老人性難聴」といいます。
老人性難聴は、内耳という耳の奥の部分から聴神経、脳に器質性の病変がある「感音性難聴」に分類されます。
ここでは、認知症と難聴との関係性についてご説明します。
認知症と難聴には、どのような関係があるの?
実は、認知症と難聴は深い関連性があります。
たとえば、以下のような質問について考えてみてください。
- 難聴の方は認知症になりやすい?
- 認知症の方に難聴があれば、認知症の進行は速くなる?
上記の質問の答えはどちらも「はい」です。
耳が聞こえにくい、ということは、家族や隣人、友人などとコミュニケーションがとりにくい状態であると考えてください。
難聴であることによって、相手の話が聞こえにくくなると、聞き返すことが多くなります。
次第に会話が減り、家族や社会から孤立してしまうことが認知症を作りやすくしてしまうのです。
また、認知症の方に難聴があれば、認知症の進行が速くなりやすいというのも、コミュニケーションの不足が原因です。
聴力は会話の維持に重要な機能です。それが低下してしまえば、認知症の進行につながります。
意外と多いのが、認知症と難聴の混同です。
声をかけても返事が返ってこない、会話の内容を理解していないなどの理由から認知症を疑われる方が、実は難聴が原因だったということもありえます。
次章では、認知症の方が難聴の場合の対応についてご説明しましょう。
認知症で難聴がある方のケア
認知症の方が難聴であると、会話の維持が困難です。
- 「話が伝わらない」
- 「何度も同じことを聞き返すので、会話が前に進まない」
- 「聞き間違いが多く、急に怒りだす」
すべて認知症の方が難聴である場合のご家族の悩みです。
確かに耳が聞こえにくいと、かなりの大声を出しても伝わりません。
10回以上同じことを聞き返すこともあるので、会話の内容はすでに忘却の彼方、という場合もあります。
「箸をとってください」とお願いしたら「恥をかかせるなだと!」といって怒りだしたおじいちゃんもおられます。
認知症があり、なおかつ難聴である方とのコミュニケーションは難しいものですよね。
しかし、会話を避けていると、より認知症が進行してしまいます。
老人性難聴は、特に高音域の音が聞きとりにくいといわれています。
認知症があり難聴の方へ話しかけるときは、なるべく低い声で、話すスピードはゆっくり、はっきりした発音を心がけましょう。
大切なのは、会話を進めながら、聞こえているか、聞き間違っていないかなど、認知症の方の反応を確かめることです。
会話は脳の活性化を促します。
難聴の方だからと臆することなく、コミュニケーションをとってくださいね。
実は、耳垢や水などが耳の中に溜まっており、聴力が低下している可能性もあります。
ですので、急に難聴になったと感じられる場合は耳鼻科を受診してみましょう。
認知症が軽度の場合は、補聴器を使用すると聴力を補ってくれます。認知症が進行してくると、使用が困難になったり、紛失したりすることがあります。
認知症があり難聴の方は、交通事故や避難警報の聞き逃しなどにより、室内外で事故のリスクが高いため、介護者はご本人に危険がないかという配慮も必要でしょう。