認知症で寝たきりになるのはナゼ?
認知症の方を介護しているご家族の労力は大変なものです。
なかでも、
「うちのおじいちゃん(おばあちゃん)が寝たきりになったらどうしよう?」
という寝たきり問題については、介護者であれば誰もが考えたことのある不安な未来像です。
では、認知症の方が寝たきりになる原因と何でしょうか。
今回は、そんな原因も含め、認知症の方が寝たきりになるというケースについてご説明していきます。
認知症で寝たきりになる原因とは?
認知症で寝たきりになるのはナゼなのでしょうか?
まず、認知症のなかでもアルツハイマー型認知症の推移についてご説明します。
個人差や環境によって大きくかわりますが、認知症が発症しておおむね4年から6年で高度(末期)に進行します。
認知症が高度になると、運動機能が徐々に低下し、活動性も低下していくので寝たきりの状態になりやすいといわれています。
しかし、介護の現場で認知症の方に接していると、寝たきりになる最大の原因は環境の変化だと感じています。
勿論、認知症の進行も要因のひとつですが、環境の変化によって寝たきりになった認知症の方を大勢見てきました。
例えば、認知症の方が転倒します。
大腿骨を骨折していました。
その場合、長期の入院になってしまいます。
もしくは、肺炎になって入院してしまいます。
退院するときに骨折や肺炎は完治していますが、そのまま寝たきりになってしまう場合が多いのです。
入院は怪我や病気の治療のために必要ですが、認知症の方にとって環境が変化し、安静にしている期間が長
く続くと、廃用性症候群を起こしてしまします。
廃用症候群とは、いろいろな心身機能が低下している状態を指します。
廃用症候群は、生活不活発病と呼ばれることもあります。
次章では、認知症の方が寝たきりにならないための予防法をお伝えしますね。
認知症の方が寝たきりにならないために
認知症の方が寝たきりにならないために、手術や治療で入院しても、早めに退院して住み慣れた場所に戻るようにしましょう。
引き続き治療が必要であれば、主治医や往診をしている医師に診察を受けてください。
自宅や施設で日常生活を送りながら、リハビリを行うことで寝たきりの予防になります。
すでに、寝たきりの認知症の方をお世話している介護者には、三田さん(仮名)の経験をご紹介します。
三田さん(仮名)の経験
私は、三田さんを思い出すと、喜びと元気が湧いてくるのです。
そして、三田さんのお話には、寝たきりの方への対応の秘訣があるように思えます。
三田さんは87歳の女性です。軽度の認知症がありましたが、訪問介護と通所介護(デイサービス)を利用しながら、お一人で暮らしておられました。
私が初めて三田さんにお会いしたのは、三田さんがご自宅で倒れられて、病院に運ばれた2カ月半後でした。
その時の三田さんは寝たきりになっており、口から食事が食べられないため、鼻からチューブを入れて栄養剤を流し込んでいました。
両手には、鼻のチューブを引き抜かないように、ご自分で外すことができないミトンを着用していました。
話しかけても、返事はなく、時々声を発するのみでした。
三田さんは退院後、自宅に戻ることができないため、看護小規模多機能型居宅介護という事業所を利用しながら、帰宅を目指すことになりました。
事業所の職員は、下記の対応を実施しました。
- 日中は、他の利用者さんがおられるリビングで座って過ごしていただくこと(歌や散歩、ボール投げなどのレクリエーションに参加していただく)
- 積極的に三田さんに話しかけること
- 職員が側にいるときは、両手のミトンを外して手を動かしていただくこと
1週間後には三田さんの笑顔がみられ、2週間後には歌を歌い、短い会話が出来るようになりました。
おしめを使わず、トイレで排泄ができるように歩行の訓練を始めました。
3週間後には車椅子ではなく、ひじ掛けのついた椅子に座っていただき、1カ月後には看護師と共にとろみがついた水分を飲み込めるようになっていました。
退院して3か月後の三田さんは、自宅に帰宅され、歩行器を使って歩いています。
レストランに行くと、ステーキを注文します。寝たきりの三田さんは、もうどこにもいません。
認知症の方は介護者の適切なサポートによって、多くのことができるようになります。
また、寝たきりになっても寝たきりになる前の生活をあきらめないことが、寝たきりを防ぐ最善の方法ではないでしょうか。