認知症の方が食べないのは何故?
認知症の方が食事を食べないというケースがあるのは、何故なのでしょうか?
まず最初に、私は月に数回、介護の学校の学生さんに講義をしています。
毎回、学生さんたちへの質問は、
「認知症のおばあちゃんが、皆さんの作った食事を食べなくなりました。どのような理由が考えられるでしょうか」
という内容です。
その答えは何通りもあるのです。
認知症の方一人ひとりに個性があるように、食事を食べない理由もそれぞれ異なっています。
ここでは、認知症の方が食べないということについてご説明します。
認知症の方が食べない時の代表的な原因・症状とは?
認知症の方が食事を食べない場合の代表的な原因や症状について説明します。
高齢になれば、誰しも様々な慢性疾患があります。
特に認知症の方は、ご自分の病状を訴えにくく、適切な健康管理ができないことも多いため、新たな不調を見落としやすいものです。
ご家族や隣人と喧嘩をしてしまった、友人の病状が思わしくないなどの理由により、気分が落ち込んで食欲が減退する場合もあります。
認知症には、振戦という手の震えなどの症状が伴う場合があります。
手の震えが大きく、食事をうまく口に運べない、こぼしてしまうなどの理由により、食事を食べなくなることもあります。
また、歯茎が痩せて、義歯(入れ歯)が合わない、口内炎ができている、舌が汚れている、飲み込む力が弱まったなど、口腔・咽頭の問題により食べなくなっている場合があります。
視力が低下する、白内障の進行などにより、お皿の場所が見えにくくなったり、食事が美味しく見えなかったりすることが原因の場合もあるでしょう。
部屋が暗い、排せつ物の匂いがする、机の上が整頓されていないもしくは汚れている、寒い、暑いなどの原因により食欲が低下している場合もあります。
内服によって胃の調子が悪い、新しい薬が処方されたなどの理由により食事量が減少することがあります。
次に、認知症の方が食事を食べない場合の対応をご説明します。
認知症の方が食べない場合の対応について
心を込めて作った食事が食べてもらえないと、介護者の方はがっかりしますよね。
しかし、認知症の方が食事を食べないことには理由があります。
一番身近な介護者の方が原因を探り、適切な対処方法を試してみましょう。
血圧や脈拍、体温を確かめてください。認知症の方が食べなくなる前と変化はありませんか。
他には元気がない、呼吸が荒い、体のどこかを手で抑えているなどの様子が見られたら、主治医の受診をお勧めします。
認知症の方がお好きなメニューを提供する、認知症の方の話に耳を傾けることで、気分が回復することがあります。
手の震えにより食べられない場合には、認知症の方が嫌がらなければ食事のお手伝いをしてください。
食器や箸、スプーン、フォークを食べやすいものに変更することも有効です。
口腔・咽頭が原因であれば、歯科の受診(往診)や言語聴覚士によるリハビリによって、再び食事が美味しく感じるでしょう。
視力の低下、白内障の進行では、眼科の受診と食事のお手伝いにより、食欲が回復することがあります。
介護者の方が食事をしたいと思える部屋かどうか確認してください。
季節の花を飾るなどインテリアに工夫すると良いでしょう。
胃痛や胸やけの有無に注視してください。新しい薬を処方されたことにより、食べない場合は医師に相談しましょう。
認知症の方にとって、食事は大きな楽しみです。
介護者の工夫や対応次第で美味しく食事ができます。
時々、認知症の方の好物のおやつを一緒に召し上がってはどうでしょうか。
その際は、食事を少し食べなくても、「まあ、いいか」と気楽な心持ちになってくださいね。