認知症は脱水になると悪化するのか?
認知症であるなしにかかわらず、暑い季節になると、いたるところで脱水症の注意喚起がありますよね。
脱水とは、水分や電解質などの体液が著しく不足した状態です。
軽度の脱水は、身体の体液が体重の約3~5%減少した状態です。
重度の場合は、体重の約10%以上が減少した状態を指します。
実は、脱水は暑い季節だけではなく、1年を通して気を付けなければならない症状です。
まして認知症の方にとって、脱水は生命の危険を及ぼしかねない恐ろしい症状といえるでしょう。
ここでは、認知症と脱水の関係性についてご説明します。
認知症で脱水が危険な理由とは?
高齢になると水分の保水能力が弱まるため、発汗や浸出液、下痢や食欲不振などですぐに脱水状態になってしまいます。
特に認知症の方は、ご自分の不快・不調といった身体感覚への反応が低下しており、適切に対処できないことがあります。
または、認知症の方が脱水に陥って、ご自分の状態に気がついていても、症状を言葉にして訴えることができない場合もあります。
周囲の介護者などが脱水に気がついたときには、深刻な状況になっていることも珍しくありません。
そして、認知症の方が脱水症状を訴えることができなくても、脱水による生理的状態の変化によって、認知症は確実に悪化します。
認知症の方が大きな声で叫ぶ、介護者に対して暴力的な態度をとるなどの不穏な行動が、脱水による便秘が原因の場合があります。
また、脱水はせん妄を引き起こす要因となります。
せん妄とは、軽度の意識障害が基となって起こる、錯視(実際の事物を見誤る)や幻視を伴う興奮状態です。
では、認知症の方の脱水をどのように予防すればいいのか、その対応についてご説明します。
認知症の脱水を予防しよう!
認知症の方が脱水になると、恐ろしい状態になることは理解していただけたと思います。
では、脱水を予防するために介護者はどんなことに配慮すればよいかお伝えします。
脱水の予防は水分をとることです。
まず、認知症の方の水分摂取量を把握してください。
1日にどれくらいの水分を摂取しておられるか、情報収集することが予防の第一歩です。
食事やおやつ、服薬時にさりげなく様子を見てみましょう。
個人差はありますが、1日1,500ml以上の水分をとるようにしてください。
ただし、循環器疾患などで水分制限がある方は、医師と相談し水分制限量を守ってください。
特に、スポーツドリンクや経口補水液には電解質が含まれているので、脱水の予防に効果的です。
認知症の方のなかには、排泄の失敗を恐れて、水分をとることを嫌がる場合もあります。
そのときは、スポーツドリンクやジュースを使って、ゼリーや寒天を作成してはどうでしょうか。喜んで召し上がってくださることが多いものです。
次に、見逃してはならないのは、脱水の初期症状です。
脱水の初期症状とは、以下のような状態です。
- 食欲がない
- 微熱がある
- 尿量が少ない、もしくはいつもより濃い色をしている
- 便秘が続いている
- 皮膚が乾燥している
- 腋の下が乾いている
ひとつでも該当する症状があれば、脱水の初期症状だと考えて、水分をとっていただくことをお勧めします。
口の中が乾いている、意識がはっきりしないなどの症状があれば、重症の脱水の恐れがありますので、医療機関を受診してください。
介護者は、認知症の方の最も近くにいて、最もその症状を発見しやすい立場にあります。
認知症の方としっかり向き合い、脱水を予防してくださいね。