認知症で同じ話をすることについて
あなたは、認知症の方と会話をしていて「ああ、またこの話か」と思ったことはありませんか?
認知症の方は何度も同じ話をします。同じ話だけではなく、同じ言葉を繰り返すこともあります。
あるおじいちゃんは、戦争と満州の話を繰り返します。
おじいちゃんはもう何百回も同じ話をなさっているので、聞き手である私は話の内容だけではなく、声の強弱や語尾まで再現できるほどです。
では、認知症の方はなぜ同じ話を繰り返すのでしょうか。
ここでは、認知症の方が同じ話をする原因や対処法についてご説明します。
認知症で同じ話をするのはナゼなのか?
認知症の方が同じ話を繰り返すのは一見不思議なことのように思われますが、それは認知症の中核症状が原因です。
認知症になると脳の細胞が壊れることによって、様々な認知機能が低下します。
- 記憶の障害
- 見当識の障害
- 理解・判断力の障害
- 実行機能障害
- 失語、失行、失認の低下
などが中核症状にあたります。
認知症の方が同じ話を繰り返すのは、①記憶の障害の症状が起きていると理解してください。
認知症の方は記憶の衰えにより、以前話したことを忘れてしまい、また同じ話を繰り返しているのです。
ここで記憶について少しお話します。
覚える、思い出すといった記憶の働きは、脳の海馬という機関がコントロールしています。
若いときは、どんどん新しいことを覚えて、いつでも思い出すことができますが、認知症になると聞いたことや大切なことを覚えられず、つい先ほどの出来事も思い出せなくなります。
認知症の方が同じ話を繰り返すのは、話したことを忘れてしまうことから起こる症状ですが、一方で話の内容そのものは忘れていないという見方もできます。
では、認知症の方が同じ話を繰り返すときにどのような対応をしたらよいか、次章で紹介します。
認知症で同じ話をするときの対応とは?
認知症の方が同じ話を繰り返すのは、中核症状と呼ばれる記憶障害が原因です。
認知症の方の記憶障害とうまく付きあっていくために、介護者はどのような対応を心がければ良いのでしょうか?
最初に知っていただきたいことがあります。
認知症の方が何度も同じ話をするのは、あなたが話をするに値すると相手だと判断して話しかけているのです。
認知症は進行するにしたがって、記憶能力も低下します。
比較的保ちやすいといわれているのが遠隔記憶(数日以上~数十年)です。
また、強い感情や印象に残った記憶も忘れにくいといわれています。
誰でも大切な思い出や印象に残った話を伝えたい相手は慎重に選択しますよね。
認知症の方も同じです。
あなただから伝えたい、という気持ちがあって同じ話を繰り返しているのです。
次に同じ話を繰り返す方への対応を考えてみましょう。
介護者は、話の内容をよく聞くことが重要です。
「薬がない」「財布が見つからない」といった困りごとであれば、見えやすいところに置くようにするなどの対応で解決できる場合があります。
思い出話であれば、どこまで記憶しているか確認して、忘れている記憶をさりげなく補うことで、認知症の進行を遅らせる助けになるでしょう。
最後に、もしあなたが忙しくないときは、認知症の方が何度も繰り返す同じ話を楽しんで聞いてみてください。
認知症の方が同じ話を繰り返すときに「ああ、またこの話か」ではなく、「まだこの話を忘れていない」と受けとめてコミュニケーションを楽しむことが、介護を楽しくする最大の秘訣なのです。