認知症と「うつ」の似ている点と異なる点
今や、うつ病は社会的な問題で、日本は先進国の中でも「うつ病による自殺」が多い方に入ります。
認知症の初期は「うつ病」によく似ているので、鑑別が付くまでに時間がかかります。
それは、「食欲が無くなる」「引きこもりがちになる」「眠れなくなる」などの症状が、うつ病と認知症の両方で見られるためです。
勝手に「うつ病」だろうと判断していると、認知症の発見が遅れることになるかもしれません。
今回は、認知症と「うつ」について説明します。
認知症と「うつ病」の症状の違いとは?
認知症の初期(特にアルツハイマー型認知症)は、日常生活に少しずつ支障が出るので不安が強くなります。
「私はバカになった」と訴える人もいます。
不安が強くなると、他人との交流を避けたり趣味を止めてしまったりと、ふさぎ込むようになり「抑うつ状態」となります。
これが、認知症とうつ病との鑑別が必要な点です。
明らかに違う点は、以下のような点でしょう。
- 物忘れの有無
- SPECTやPET検査による脳の血流量
- MRIによる脳の萎縮の有無
ただし、初期の認知症の場合には、脳の萎縮は見られないこともあります。
うつ病の人に「長谷川式認知症スケール」や「MMSE」のテストをすると、質問に答えるのが面倒なために「知らない・分からない」と言う場合が多いです。
ところが、認知症の人は「協力的で努力して答えようとしても思い出せない」という様子が見られます。
認知症の人が「うつ」のように見える原因
初期の認知症の人が「うつ状態」になるのは、なんだかヘンな自分に対して不安があるからです。
しかし、認知症が進んでくると自分から動こうとしない、食事を取らないなどの症状が出てきます。
これは、脳が萎縮する(脳細胞が減る)ことにより、生命活動そのものが低下してしまうためです。
初期の認知症の人の、不安から来る介護者への付きまといなどには「抗不安薬」が効きます。
しかし、認知症が進行したことによる意欲低下には「抗不安薬」」は効果がありません。
初期の認知症と「うつ」の鑑別は難しいので、1回の診察で認知症の診断がつけられないこともあります。
同居しているご家族からの情報は、医師の診断にとても役立ちますので、日ごろの状況をよく見ておきましょう。